Article無痛分娩の適応症5例|保険適用になるのか、相談すべきポイントなどを解説
未分類 2024.11.16
無痛分娩を希望している状態で持病がある場合、自分が適応症に該当するのか気になることでしょう。痛みとともに心身の負担を軽減できる無痛分娩は、母子が安全に出産できる方法として選択されることがあります。
この記事では、無痛分娩の適応症5例とそのほかに適応外となる条件、保険適用の可能性について解説します。医師と相談しやすくなるためのポイントも紹介するので、役立ててください。
無痛分娩の適応症5例
無痛分娩は医師により通常分娩のリスクが高いと判断される場合、母体や胎児の安全のために医学的適応となる症例があります。一般的な無痛分娩の適応症は、以下の5つです。
- 妊娠高血圧症候群の発症
- 疲労性微弱陣痛による分娩遷延(せんえん)
- 脳血管疾患の合併
- 心疾患の合併
- 精神疾患の合併
それぞれの状態や無痛分娩にするメリットを解説します。
1.妊娠高血圧症候群の発症
妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧を発症した状態のことです。重症化すると痙攣や意識消失が起こる子癇(しかん)発作を発症したり、赤ちゃんの発育が悪くなったりする可能性があります。
陣痛は血圧を上昇させる原因となるため、母体と胎児の安全のために無痛分娩が選択される場合があります。痛みによる血圧上昇や心拍数増加を麻酔の使用で抑え、母子の負担軽減を図ることが可能です。
妊娠高血圧症候群は、以下の状態が当てはまります。
妊娠高血圧 症候群の例 |
妊婦さんの 状態 |
高血圧合併 妊娠 |
妊娠前か妊娠20週までに 高血圧を発症 |
妊娠 高血圧症 |
妊娠20週以降に 高血圧のみ発症 |
妊娠高血圧 腎症 |
高血圧と蛋白尿を認める |
高血圧は、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上になった状態です。蛋白尿は、尿中に1日0.3g以上の蛋白が出る場合に診断されます。
ただし、妊娠高血圧症候群であっても血液中の血小板や凝固機能が低下している場合には、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔が難しくなります。無痛分娩前には、確認のための採血が必要です。
2.疲労性微弱陣痛による分娩遷延(せんえん)
疲労性微弱陣痛による分娩遷延(せんえん)とは、痛みで母体が疲れ、陣痛が弱くなり分娩が進まなくなった状態のことです。上手にいきめなくなるほか、分娩後に子宮の収縮が悪くなり出血量が多くなる可能性があります。
また、胎児にとってもストレスの多い環境が長く続く状態です。
この状態のときに無痛分娩をおこなうと、痛みにより生じるさらなる疲労を防止できます。体力回復とともに陣痛が復活し、分娩が進みやすくなります。
3.脳血管疾患の合併
脳動脈瘤・もやもや病・脳動静脈奇形など脳血管疾患のある妊婦さんも、無痛分娩が適応となる場合があります。分娩時のいきみや過呼吸は、血圧上昇により脳に負担をかけ、脳出血や脳梗塞のリスクを高める可能性があります。
そのため、血圧の変動を抑えられる無痛分娩が有効です。
無痛分娩が適応されるかどうかは、脳血管疾患の種類・症状・状態によっても異なります。医師に相談しながら、判断してもらいましょう。
4.心疾患の合併
心臓の持病も、無痛分娩の適応症です。心疾患は陣痛によって心臓に負担がかかり、症状が悪化するリスクがあります。
麻酔の使用により、母体の安全を確保できるでしょう。
日本循環器学会の「心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン」によると、循環器の専門施設が中等度の心疾患をもつ妊婦さんの妊娠・出産をおこなうためには、以下の施設基準をクリアする必要があるとされています。
- 麻酔科医が常駐(24時間対応)
- 中心静脈圧・動脈圧・肺動脈圧などの連続モニターが可能
- 麻酔装置が常備されている
- 緊急帝王切開や無痛分娩に対応できる
心臓への負担を最小限に抑えなければならない妊婦さんの場合、設備面で必要な内容もあり、担当医の指示のもと出産する病院を決めることが大切です。なお、一部の心疾患は無痛分娩が難しい場合もあるため、医師の見解を確認してください。
5.精神疾患の合併
うつ病やパニック障害、睡眠障害などの精神疾患を抱えている妊婦さんも、状況によっては無痛分娩が適応となる場合があります。出産は精神的な負担も大きく、悪化するきっかけになる可能性があります。
麻酔の使用により痛みやストレスが軽減されやすくなるでしょう。
ただし、精神疾患の種類や症状、服用している薬によっては、無痛分娩が選択できない場合もあります。医師に現状を相談し、判断してもらってください。
無痛分娩が適応外となる条件
紹介してきた適応症以外にも、以下の条件では無痛分娩を断られる可能性があります。
- 血液が固まりにくい体質をもつ(血液凝固障害)
- 局所麻酔薬アレルギーがある
- 大量に出血している、脱水が著しい
- 背骨に変形がある、背骨の手術後、背中の神経に病気がある
- 注射する部位に膿が溜まっている、全身がばい菌に侵されている
- 高熱がある
医師が難しいと判断した場合は、希望したとしても無痛分娩は選べないでしょう。
無痛分娩の適応症は保険適用の可能性もある
原則として、無痛分娩は保険適用外の自由診療です。しかし、医学的な必要性が高いと認められる場合は、保険適用となるケースがあります。
医師の診断や病院にもよるため、ご自身の状況に合わせて相談し、確認しておくとよいでしょう。
無痛分娩のメリット・デメリット
無痛分娩には痛みの軽減以外にもメリットがあります。メリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・痛みの軽減により安心感につながる
・分娩時に心身への負担が軽減される ・精神的な余裕により出産時の感動が増える |
・投与に注意が必要な疾患がある
・麻酔による副作用が出る可能性がある ・陣痛促進剤の併用が必要な場合もある |
無痛分娩は痛み・いきみとともに、心身への負担が軽減されます。精神的な余裕により、出産時の感動も味わいやすくなるでしょう。
一方で、麻酔により陣痛が弱まる可能性もあり、場合によっては陣痛促進剤を併用します。重篤な高血圧症や心臓弁膜症(心疾患)など、麻酔の投与に慎重にならなければならない疾患もあるため、リスクなども十分に確認しておく必要があります。
無痛分娩に向けた医師との相談ポイント
無痛分娩に向けて医師と持病を踏まえて相談するときには、必要な情報を伝えることが重要です。医師は、病名だけでは安易に無痛分娩の適応と判断できません。
また、自身に不安を残さないためにも、聞くべきこと・伝えるべきことを明確にして、正確に状況を理解する必要があります。
ここでは、無痛分娩に向けた医師との相談ポイントを紹介します。診察時の面談に役立ててください。
事前に準備すべき質問事項
体に心配な点がある状態で医師と無痛分娩の相談をしたいときには、事前に質問事項を決めておきましょう。聞きたい内容を書き出しておくと、聞き忘れる心配もなく、不安の解消につながります。
以下の質問事項を参考にしてください。
- 自分は無痛分娩の適応症に該当するか
- 自分に適した無痛分娩の方法(硬膜外麻酔や脊椎くも膜下麻酔など)
- 無痛分娩で起こりうるリスクと副作用
- 保険適用されるか、無痛分娩にかかる費用
- 無痛分娩開始や入院のタイミング
- 無痛分娩を選択したときの注意点
持病がある場合、出産による負担は心身ともにさらに大きくなります。不明点をなくして、見通しを立てられるようにしておきましょう。
自身の状態の伝え方
無痛分娩の適応症に該当するかどうかは、診察のほか、生活上で妊婦さん自身が感じる症状なども踏まえて医師が判断します。出産方法を検討するときには、以下のポイントで伝えてください。
- 疾患の発症から現在までの経過
- 現在の体調で気になること
- 現在の治療内容と担当医の見解
産科以外で持病の担当医がいる場合、診療情報提供書や紹介状を依頼しましょう。これまでの経緯や治療方針などを医師間で情報共有するために必要な書類です。
医師からの説明を理解するコツ
無痛分娩の質問をしても、一度で理解するのが難しい場合もあります。以下のポイントを意識しながら聞くのがおすすめです。
- メモを取る
- わからないことは質問する
- 家族やパートナーと聞く
専門用語が出てきた場合や理解できない内容は、ぜひ質問してください。特に、無痛分娩の適応症である妊婦さんは、不安も大きくなります。
メモを取っておくと何度も確認でき、安心材料にもなるでしょう。また、都合がつく場合には家族やパートナーと聞くと、体の状態にあわせた情報を共有でき、ともに出産に向かえます。
まとめ
無痛分娩には、医学的に必要と判断される適応症があります。「通常の分娩方法が母子に危険を及ぼす」と医師が判断したときに、安全に出産を終えるために適応されます。
おもな症例は、妊娠高血圧症候群や疲労性微弱陣痛による分娩遷延(せんえん)、脳血管疾患・心疾患・精神疾患の合併などです。
無痛分娩は痛み・いきみによる心臓への負担や、精神的なストレスなどを軽減できます。ただし、服用している薬や持病の状態によっては、ほかの分娩方法が選択される場合もあるでしょう。
この記事を参考に、まずは医師と状態を共有して適切な判断を仰いでください。