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Article帝王切開の後遺症が心配な方へ|起こりうる症状とケア方法を解説

未分類 2024.11.21

帝王切開の後遺症が心配な方へ|起こりうる症状とケア方法を解説

帝王切開では、後遺症について不安を抱く産婦さんも少なくありません。帝王切開は母子の安全を守るためにお腹を切って出産する方法であり、産後にさまざまな症状が出てくる可能性があります。

この記事では、帝王切開に伴い発症する可能性のある後遺症とケア方法を解説します。安全な家族計画を図るために、帝王切開後の妊娠・出産についても把握しておきましょう。

帝王切開で起こる可能性のある後遺症

症状や程度には個人差がありますが、帝王切開は手術になるため、出産後には身体的・精神的な後遺症が残る可能性があります。帝王切開で起こりうる後遺症を解説します。

身体的な後遺症

身体的な後遺症のおもな例は、以下のとおりです。

  • 傷あと
  • 痛みやかゆみ
  • 月経異常
  • 癒着(ゆちゃく)
  • しびれ
  • 頭痛

それぞれ解説します。

傷あと

帝王切開では、お腹にメスを入れるため、後遺症として傷あとが残ります。程度は、傷の治りやすさや体質、手術時の状況によって個人差があります。

帝王切開における皮膚の切り方には「縦切開」「横切開」の2種類があり、違いは以下のとおりです。

縦切開 横切開
・腱に沿うため、自然で出血が少ない

・ケロイドができやすいとされる

・手術時間:約35分

・恥毛のすぐ上部分を切開するため、傷跡が目立ちにくくなる

・赤ちゃんの取り上げに時間を要し、術後の痛みが比較的強いとされる

・手術時間:約50分

縦切開は赤ちゃんを早く取り出せるため、緊急帝王切開で選択されます。一方、横切開は、計画帝王切開で傷あとを懸念し選択する産婦さんが多くいます。

帝王切開の傷あとの変化は、以下のとおりです。

  • 術後すぐ:傷口は赤く腫れ、痛みや熱感を伴う
  • 術後数日~数週間:傷口が徐々に落ち着き、赤みが引いてくる
  • 術後数カ月~数年:傷あとは白っぽく変化し、徐々に目立たなくなってくる

傷あとを完全に消すことは難しいものの、適切なケアにより目立ちにくくできます。

痛みやかゆみ

帝王切開後は、手術による組織の損傷や治癒過程で、後遺症として傷口周辺の痛みやかゆみを感じるケースがあります。これらは時間の経過とともに軽減しますが、症状が強かったり長引いたりする場合は、我慢せずに医師に相談して傷の診察を受けてください。

かゆみに対し掻きむしってしまうと傷口が悪化してしまう可能性があります。適切な処置や処方を受けることで、症状軽減を図れます。

月経異常

帝王切開によって子宮内膜に傷がつくと、月経異常が起こるケースがあります。具体的には、以下のような症状が生じるでしょう。

  • 不正出血:生理以外の時期に出血する
  • 過長月経:生理の出血が8日以上続く
  • 月経困難症:日常生活に支障があるほどひどい生理痛、吐き気や腹痛を伴う場合もある

帝王切開後の月経異常は、子宮の回復とともに自然に治まることもあります。しかし、症状が重い場合や長引く場合は「帝王切開瘢痕(はんこん)部症候群」が原因となっている可能性があります。

帝王切開瘢痕部症候群は、切開した子宮の筋肉がうまく癒合せず、子宮壁が薄くなったり子宮内に粘液が貯留したりする状態です。不妊症の原因にもなるといわれており、医療機関への相談が必要です。

癒着

帝王切開は子宮を切開するため、その傷が原因で子宮の内側や周辺組織と癒着(ゆちゃく)してしまう場合もあります。癒着とは、自然治癒する過程で本来離れているべき組織同士がくっついてしまうことです。

程度には個人差があり、症状が出ない場合もあれば、以下のような症状が出る場合もあります。

  • 慢性的な下腹部痛
  • 腸閉塞
  • 不妊症

癒着が起きると、以降の帝王切開や腹部の手術時に、時間や手間を要します。近年では、癒着を予防するために、癒着防止材を使用するケースもあります。

しびれ

帝王切開の後遺症として、一時的なしびれも挙げられます。

帝王切開は、背中からカテーテルと呼ばれる細い管を入れる硬膜外麻酔と、脊髄くも膜下麻酔を使用します。麻酔の影響で帝王切開後に足などがしびれることもありますが、多くが半日ほどで軽快するでしょう。

しびれがなかなか改善しない場合には、手術中の体位で神経が圧迫されていた可能性があります。長引いたり不安に感じたりする場合には、医師や看護師に相談してください。

頭痛

帝王切開後に起こる頭痛は、手術中に脳と脊髄を包む硬膜を傷つけてしまい、そこから脳脊髄液が漏れて生じている可能性があります。硬膜穿刺後頭痛と呼ばれる、まれに起こる後遺症です。

この頭痛は、手術後2日以内に起こるケースが多く、特に上半身を起こしたときに強く、横になると軽くなるという特徴があります。

多くの場合、安静にして痛み止めを飲み対処していきますが、頭痛が改善しなかったり物が二重に見えたりする場合は、血液を注入してかさぶたのように固まらせて硬膜の穴を塞ぐ「硬膜外血液パッチ」と呼ばれる処置が必要です。医師に相談しましょう。

精神的な後遺症

帝王切開は母子の安全のために選択される出産方法であるものの、自然分娩を希望していた場合、精神的な後遺症につながるケースもあります。特に、緊急帝王切開では、心の準備ができないままに出産にいたる場合もあり、母親としての自信を喪失してしまうきっかけになる可能性もゼロではありません。

なかには、周囲の人から心無い言葉をかけられて傷つくこともあります。精神的な後遺症は、帝王切開後の傷の痛みなども相まって、育児ストレスにつながる可能性もあるため、無理をしないよう適切なフォローが重要です。

帝王切開の後遺症ケア方法

帝王切開の後遺症を予防したり、改善を図ったりするためにも、適切なケア方法を把握しておくことが大切です。傷あとや痛み・かゆみ、月経異常、精神面でのケア方法について紹介します。

傷あとへのケア

傷あとは、引っ張られないように固定することが大切です。皮膚が引っ張られたり、摩擦・紫外線などの刺激が加わったりすると、中から皮下組織が出てきてしまい、傷あとが広がって残りやすくなります。

傷あとが広がってしまうと綺麗に消すのは難しいため、手術後1~3カ月はケアを丁寧におこなわなければなりません。

傷あとのケアには医療用テープを使用します。たとえば、医療用のサージカルテープを使用する場合は、傷あとに垂直になるようにしながら隙間をあけずに重ね貼りします。

交換頻度を少なくしたい場合は、1週間ほど張り替えが不要な、手術後の傷あとケア用テープを使用するのもよいでしょう。

テープによる保護は、傷あとが周りの皮膚と同じような色になるまで継続するのがおすすめですが、判断が難しい場合は医師に相談してください。傷あとが目立たなくなったあとは、乾燥によるかゆみを予防するために、保湿を心がけます。

痛みやかゆみへのケア

帝王切開の後遺症として痛みやかゆみが生じた場合は、以下のようなケアをおこないます。

  • 医師の指示に従い、薬を服用する
  • 無理な動きを避ける
  • 傷口を清潔に保つ
  • 刺激の少ない素材の衣服を着用する
  • それでも痛みやかゆみが強い場合は、医師に相談する

帝王切開の傷あと周辺の痛みやかゆみは、治癒過程で起こる自然な反応です。術後しばらくは、このような症状が現れることを理解しておきましょう。

とはいえ、痛みが続いたり、かゆみがひどかったりする場合は、自己判断せずに医師へ診察してもらってください。

月経異常へのケア

月経異常が続く場合は、医師への相談が必要です。超音波検査やMRI、子宮鏡下検査などをおこない、帝王切開術後瘢痕症候群になっているか診断します。

次の妊娠を希望しない場合には、過多月経などの症状がなければ治療は必要ありません。治療する場合は、低用量ピルなどを用いたホルモン療法や、腹腔鏡手術・子宮鏡手術などでの瘢痕部切除・修復をおこないます。

精神的なケア

帝王切開後に精神的な後遺症を生じた場合、パートナーや友人など、周りへ相談できる環境があるとよいでしょう。産後はホルモン変動により情緒不安定になりやすく、産後うつに移行しないためにも、1人で抱え込まないことが大切です。

家族や友人に相談できない場合は、医師や看護師に相談するのも有効です。産後の心身の不調に関する専門的なアドバイスを受けながら、必要に応じてカウンセリングや精神科への受診も検討できます。

また、同じように帝王切開を経験した人と話せる場に参加するのも一つの方法です。

出産後の精神的な変化は、決して恥ずべきことではありません。焦らずに、自分のペースで心身の回復を目指してください。

帝王切開後の妊娠・出産について

帝王切開は子宮を切開して赤ちゃんを取り出す手術であるため、しっかり治癒して次の妊娠に耐えられるようにするためには、最低でも1年ほど必要です。早く妊娠してしまうと、子宮破裂などのリスクにつながります。

生理が来る前に排卵する可能性もあるため、避妊しておくとよいでしょう。

また、帝王切開をおこなった場合、次の出産も多くのケースで帝王切開が選択されます。経腟分娩も不可能ではありませんが、子宮破裂などのリスクもあります。

安全に次の出産に臨めるよう、医師の意見を聞きながら家族計画や出産方法を検討することが大切です。

まとめ

帝王切開は母子の安全のために選択される出産方法ですが、傷の痛みやしびれ、月経異常などの身体的・精神的な後遺症が残る可能性があります。これらの症状は、適切なケアで予防・軽減できるケースもあります。

不安がある場合は、自己判断せずに医師や看護師に相談しましょう。ぜひ今回の記事を、帝王切開後への不安軽減に役立ててください。

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