Article子宮口が開かないとき無痛分娩はできる?麻酔タイミングや対処法を解説
未分類 2024.11.21
無痛分娩のタイミングとして、陣痛が始まったり、子宮口がある程度開いたりしてから麻酔を始めるケースもあります。「子宮口が開かないときには、どのように対処すべきなのか」「指示された子宮口になるまでに痛みはあるのか」「無痛分娩による子宮口への影響はあるのか」など、不安を感じる妊婦さんもいるでしょう。
無痛分娩は、麻酔の使用で分娩時間が長引く可能性があるものの、子宮口が全開大になるまでの時間は延びないとされています。痛みがつらいときは、早い段階での麻酔開始も可能です。
この記事では、子宮口が開かない状況と無痛分娩の関係性、その場合の無痛分娩の方向性を解説します。子宮口が開かないときの対処法についても紹介するので、正しい知識を身に付け、出産に向けて役立ててください。
子宮口が開かない状況とは
子宮口の開きは、陣痛によって子宮が収縮と弛緩を繰り返すことで、徐々に開いていきます。分娩開始時期になると、この過程が自然に始まりますが、さまざまな要因により子宮口が開かない状況が起こることがあります。
まずは、子宮口が開くメカニズムと、開かないときに考えられる理由を確認していきましょう。
子宮口が開くメカニズム
子宮口は、分娩の進行にともなって徐々にやわらかくなり、開いていきます。そのメカニズムは、ホルモンや酵素などによって複雑に調節されています。
一般的な分娩経過と子宮口の開き、陣痛の様子は以下のとおりです。
分娩経過 | 陣痛 | 子宮口 の開き |
痛み レベル |
準備期 お産の 始まり |
8~10分間隔
20~30秒間 |
0~3cm | 生理痛 くらい |
進行期 子宮口の 開きが 進む |
4~7分間隔
30~40秒間 |
4~7cm | 規則的に 痛む時間 が長くなる |
極期 子宮口 全開大 が近い |
2~3分間隔
40~60秒間 |
8~10cm | 肛門への 圧迫感で いきみ たくなる 、体に 力が入る |
娩出期 赤ちゃんの 誕生 |
1~2分間隔
60~90秒間 |
全開大 10cm程度 |
痛みの ピーク とともに いきむ |
子宮口が開く速度は個人差が大きく、全開大(10cm程度)するのは初産婦さんで約10~12時間、経産婦さんで約5~6時間といわれています。この過程で母体は陣痛を感じるようになり、陣痛間隔が短くなって強さが増すにつれ、子宮口も開いていくでしょう。
子宮口が開かないときに考えられる理由
子宮口が開かないときには、以下のようにさまざまな理由が考えられます。
- 初産婦で子宮口が硬い
- 母体の疲労や睡眠不足
- 出産への不安や恐怖心、緊張などの心理的要因
- 軟産道強靭(なんさんどうきょうじん)や子宮筋腫などの身体的要因
特に、初産婦さんは経産婦さんに比べて子宮口が開きにくい傾向があります。これは、子宮頸管の柔軟性の違い以外に、初めての出産経験による不安なども関与しているでしょう。
軟産道強靭も、子宮口が開かなくなる原因の一つです。赤ちゃんの通り道にある軟産道は、広がりやすく、形を変えていくという特徴があります。
しかし、高齢出産や子宮筋腫などで軟産道が硬くなっている場合、お産を妨げてしまう原因となります。
子宮口が開かない場合には、その原因を特定し、適切な対処をおこなうことが重要です。医師や助産師は内診やモニタリングを通して、産婦さん一人ひとりに適した介入を検討していきます。
無痛分娩と子宮口の開きの関係性
「無痛分娩は子宮口の開きに影響するのではないか」と心配する妊婦さんや産婦さんもいますが、陣痛が開始してから子宮口が全開大になるまでの時間は、麻酔によって延びることはあまりないとされています。ここでは、無痛分娩の仕組みと特徴、無痛分娩が子宮口に与える影響について解説していきます。
無痛分娩の仕組みと特徴
無痛分娩は、陣痛を3分の1程度にやわらげられる方法です。一般的に、背骨付近の硬膜外腔という場所にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、そこから麻酔薬を注入して痛みを軽減します(硬膜外麻酔)。
痛みの信号は、脊髄に集まり脳へ伝わっていきます。硬膜外麻酔はその脊髄に作用し、脳に伝わる痛みの信号をブロックする方法です。
痛みの軽減により、安心感につながったり、産後の回復がスムーズになったりなどのメリットが得られるでしょう。
無痛分娩が子宮口の開きに与える影響
無痛分娩は麻酔の影響により陣痛が弱くなるケースがあるものの、陣痛が開始してから子宮口が全開大になるまで(分娩第1期)の時間は延びないとされています。ただし、子宮口が全開大してから出産までの時間(分娩第2期)が長くなる可能性はあるでしょう。
分娩時間が長引いたとしても、無痛分娩による赤ちゃんへの影響はあまりないとされています。
無痛分娩における麻酔開始タイミング
医療機関によっても異なりますが、自然無痛の場合は陣痛を待って、入院後に麻酔に必要な処置をおこないます。麻酔を開始するタイミングは、子宮口が3~5cmほど開いてからおこなう医療機関が多いでしょう。
無痛分娩には、あらかじめ分娩開始日を決めておき、陣痛促進剤を使用して人工的に陣痛を誘発する「計画無痛」という方法もあります。
計画無痛の場合、先におこなわなければならない処置があるため、入院日は計画分娩日の前日です。陣痛促進剤を併用して、効果を見ながら量を増やして分娩を開始し、痛みが出てきたら麻酔を投与していきます。
子宮口が開かない状況での無痛分娩の方向性
医療機関や産婦さんの状態によっても異なりますが、無痛分娩を選択した場合に子宮口が開かないときの方向性として、以下のような内容が考えられます。
- 経過観察と待機
- 陣痛促進剤との併用
- 麻酔を開始するタイミングの調整
子宮口が3~5cmほど開いてから無痛分娩を開始する医療機関では、無理に分娩を進めず、しばらく様子を見ることもあるでしょう。一方で、計画無痛などですでに処置がおこなわれている場合には、陣痛促進剤を併用することもあります。
子宮口が開かないにも関わらず痛みがつらいときには、麻酔の開始時期を早めることも可能です。遠慮せずに医師や助産師に相談してください。
子宮口が開かない状況での無痛分娩は、医師や助産師が産婦さんや赤ちゃんの状況をみて、最適な方法を検討していきます。
無痛分娩の選択時に子宮口が開きにくい場合の対処法
子宮口が開きにくいときの対処法には、リラックス法を取り入れたり、ストレッチやスクワットをおこなったりする方法があります。状況によっては、医療的に介入する場合もあるでしょう。
子宮口が開かない場合の対処法を紹介します。
自分でできる方法
子宮口が開かない原因には、緊張や不安、疲労などがあげられるため、産婦さん自身でリラックスできる方法を取り入れるとよいでしょう。たとえば、以下のような方法が考えられます。
- 深呼吸する
- アロマをたく
- 落ち着ける音楽を聴く
- 軽くマッサージしてもらう
リラックス効果のあるアロマをたくと、気分も変わってきます。ラベンダーやカモミールなど、事前に好みの精油を見つけておき、バースプランに取り入れるのもおすすめです。
入院前であれば、ストレッチやスクワットもおすすめの方法です。足を開く動作は、骨盤の開きや骨盤の底にある筋肉(骨盤底筋)の伸び縮みに良い影響を与えます。
ストレッチやスクワットは妊婦さんによって可能かどうかが異なるため、念のため担当医に確認しておくと安心です。
医療で介入する方法
子宮口が開きにくい場合、医療的に介入することもあります。おもに、小さな風船状もしくはやわらかい棒状の医療器具を子宮口に入れたり(子宮頸管拡張器:しきゅうけいかんかくちょうき)、陣痛促進剤を使用したりする方法があります。
子宮頸管拡張器には、さまざまな種類がありますが、その多くが挿入後に膨らむことで徐々に子宮口を広げていくものです。
たとえば、親水性ポリマーをベースにした器具は、子宮頸管内の水分を吸って2~3倍に膨張し、子宮口を押し広げていきます。注射器から風船の中に滅菌水を入れて膨らませる器具もあります。
陣痛促進剤は、一般的には、オキシトシンと呼ばれるホルモン剤を、少量から点滴で投与していきます。オキシトシンは、出産のときにも自然に分泌されるホルモンと同じ成分で、安全性が高いとされる薬剤です。
点滴開始後から規則的な周期で子宮収縮が起こるようになりますが、効果の違いは妊娠週数や個人差によっても変わるでしょう。
まとめ
子宮口は、分娩の進行に伴って徐々にやわらかくなり、開いていきます。特に初産婦さんは、経産婦さんに比べて子宮頸管が硬いため、子宮口が開きにくい傾向があるでしょう。
無痛分娩を開始するタイミングは医療機関によっても異なり、子宮口が3~5cmになってから始める場合もあれば、計画無痛として陣痛前に入院して処置を施す場合もあります。いずれにしても、痛みがつらいときには麻酔の開始時期を調整できるため、我慢せずに医師や助産師に相談しましょう。
無痛分娩は、麻酔の影響により陣痛が弱くなり分娩時間が長くなるケースもありますが、陣痛が開始してから子宮口が全開大になるまでの時間は延びないとされています。今回の記事を参考に、正しい知識をもち、安全で快適な出産体験につなげてください。