コラム記事

Article無痛分娩のリスクや安全性は?副作用や医療機関選びのポイントも解説

未分類 2024.12.08

無痛分娩のリスクや安全性は?副作用や医療機関選びのポイントも解説

無痛分娩に興味はあるものの、リスクや副作用が心配な妊婦さんもいるでしょう。無痛分娩は出産の痛みをやわらげ、快適な出産体験をサポートする有効な方法ですが、麻酔薬を使用した処置をおこなうため、リスクについても正しく把握しておくことが大切です。

この記事では、無痛分娩にともなうリスクから副作用、メリット、安全な無痛分娩のための医療機関選びのポイントまで詳しく解説します。安心して出産を迎えるために、ぜひ参考にしてください。

無痛分娩とは

無痛分娩とは、麻酔薬を用いて出産時の痛みをやわらげる出産方法です。「無痛」という名前から完全に痛みを感じないと思われがちですが、実際には3分の1ほどの痛みに軽減できるとされています。

麻酔薬には以下の3種類があり、このなかでおもに使用されるのは硬膜外麻酔です。

種類 特徴
硬膜外麻酔 背中からカテーテルを挿入し、硬膜外腔に麻酔薬を持続的に投与する方法。
陣痛の痛みをやわらげながら、意識のある状態で出産に臨める。
脊髄くも膜下麻酔 硬膜外麻酔と同じ針穴から出る専用の針を通じて、脊髄くも膜下腔に麻酔薬を投与する方法。
硬膜外麻酔より麻酔効果が早い。
静脈麻酔 点滴での麻酔方法。
硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔が難しいと判断された場合におこなうが、この中で効果はもっとも弱い。

近年では、無痛分娩を選択する人は増加傾向にあります。

全分娩数における無痛分娩の割合

出典:日本産婦人科医会|無痛分娩 産科施設の立場から

日本産婦人科医会によると、2023年時点で、日本で無痛分娩を選択している人はおよそ10人に1人の割合です。

無痛分娩のリスク

無痛分娩は快適なお産につながる一方で、起こりうるリスクも存在します。母体と赤ちゃんそれぞれへのリスクを理解したうえで、自分に適している出産方法を検討することが大切です。

ここでは、母体と赤ちゃんに分けて、それぞれのリスクを解説します。

母体へのリスク

無痛分娩で母体へ起こりうるリスクには、以下の3つが挙げられます。

  • 分娩時間が長引く可能性がある
  • 痛みが十分に緩和されない可能性がある
  • 後遺症が残る可能性がある

それぞれ解説します。

分娩時間が長引く可能性がある

無痛分娩は硬膜外麻酔の使用により、分娩時間が長引く可能性があります。

硬膜外麻酔は背中からカテーテルを挿入し、局所麻酔薬を注入して痛みを麻痺させる方法です。この麻酔によって陣痛の痛みは軽減されますが、同時に子宮の収縮力や母体のいきむ力も弱まりやすく、陣痛促進剤を併用するケースも多くあります。

また、トングのような器具で赤ちゃんの頭をはさんで引き出す鉗子分娩や、赤ちゃんの頭に吸盤のような吸引カップを装着して引っ張る吸引分娩をおこなう場合もあります。赤ちゃんの顔に鉗子による圧迫のあとがついたり、頭にコブのような膨らみが出たりすることもありますが、多くは2~3日ほどで消失するでしょう。

痛みが十分に緩和されない可能性がある

無痛分娩は、麻酔によって出産の痛みを軽減する方法とはいえ、痛みが完全に取り除けるわけではありません。痛みの感じ方には個人差があり、完全に無痛になることを期待しすぎると、実際に出産したとき、思ったより痛みを感じてしまう可能性があります。

また、お産が急激に進んだ場合には、麻酔薬の効果が間に合わなくなることもあるでしょう。その場合は十分な鎮痛効果が得られないまま、出産にいたることも考えられます。

後遺症が残る可能性がある

無痛分娩は母体への負担を軽減し、快適な出産を促すための方法ですが、稀に後遺症が残る可能性があります。ただし、重大な事故は、多くが適切な対処によって未然に防ぐことが可能です。

2017年頃には、無痛分娩の事故7例が多く報道されました。この事故のうち、4例はカテーテルの位置が正しくなかったことによる高位・全脊髄くも膜下麻酔と判明しています。

このうち1例は、母体が心肺停止からの植物状態になり、赤ちゃんは低酸素および重症新生児仮死の状態で誕生したのち、6歳で亡くなられました。

2017年4月には、無痛分娩で起こった事故を踏まえ、日本産科婦人科学会学術総会による妊産婦死亡症例検討評価委員会より「無痛分娩を行う際は、適切に対応できる体制を整えるべき」との緊急提言がされています。

日本産婦人科学会と日本産婦人科医会による「産婦人科 診療ガイドラインー産科編2023」では、無痛分娩の安全な実施のために望ましい施設の体制についても明記されており、現在、無痛分娩を積極的におこなっている医療機関は、体制が十分整った状態であるといえます。

赤ちゃんへのリスク

無痛分娩で使用する硬膜外麻酔は、赤ちゃんへの影響はほぼないとされています。

日本産科麻酔学会では、母体に投与した麻酔薬が一部赤ちゃんに移行したものの、赤ちゃんの意識状態やさまざまな刺激に対する反応などは、いずれも正常であったとする研究があるとしています。

学習障害の発生へ関する影響もないとする研究があり、赤ちゃんへのリスクはあまりないといえるでしょう。

無痛分娩で起こりうる副作用

無痛分娩では、麻酔によって以下のような副作用が生じるリスクがあります。

  • 神経障害
  • 排尿障害
  • 発熱
  • 血圧低下
  • 頭痛
  • かゆみ

これらの多くは、麻酔の効果が切れると消失します。また、稀な副作用としては、硬膜穿刺後頭痛や局所麻酔薬中毒、高位脊髄くも膜下麻酔などがあげられます。

リスクを最小限に抑えるために、事前に健康状態と照らし合わせながら医師と相談することが大切です。

無痛分娩のメリット

無痛分娩は、出産における身体的・精神的な負担を軽減し、より穏やかな出産体験にすることが期待できます。無痛分娩のメリットを3つ解説しますので、リスクを踏まえながら自身が納得できる出産方法を考えましょう。

痛みの軽減&

無痛分娩は、麻酔薬の使用により分娩時に感じる痛みを軽減することが可能です。

分娩における痛みは、陣痛による子宮の収縮と、赤ちゃんが産道を通る際の圧迫によって引き起こされます。この痛みは個人差が大きく、日常生活で経験する痛みとは比べ物にならないほどの激痛となる場合もあります。

無痛分娩でおもに使用される硬膜外麻酔は、陣痛の痛みを伝える神経の働きがブロックされ、痛みをやわらげられる方法です。十分な効果が得られると、産婦さんはリラックスした状態で分娩に臨めるでしょう。

特に、痛みへの不安が強い妊婦さんにおすすめといえます。

体力温存

無痛分娩の選択により、産婦さんは痛みが軽減でき、体力の消耗を抑えられます。出産は母体にとって大きな負担がかかるものであり、陣痛が始まってから赤ちゃんが産まれるまで、長時間かかることも珍しくありません。

自然分娩の場合、陣痛は徐々に強くなり、出産が近づくにつれてその痛みはピークに達します。この痛みは肉体的にも精神的にも大きな負担となり、出産を終える頃には母体は疲労困憊の状態になっているケースも多くあります。

体力を温存できると、出産後の回復もスムーズになり、育児への余裕もでてくるでしょう。特に、高齢出産や上の子がいる場合などは、体力の温存は重要になります。

精神的な安心感

硬膜外麻酔は、痛みの軽減で出産に対する恐怖心が減少するため、産婦さんはより穏やかな気持ちで出産に臨めるようになります。過度な緊張からお産が進みづらくなるといったことも防ぐことが可能です。

また、精神的な安心感があると、医療スタッフとのコミュニケーションも円滑になります。産婦さんは自身の状態を客観的に把握しやすくなり、医療スタッフの指示にも落ち着いて対応できるようになるでしょう。

出産という特別な瞬間を、心身ともに良い状態で迎えるために、無痛分娩は有効な選択肢といえます。

無痛分娩のリスクを抑えるための医療機関の選び方

無痛分娩は、適切な医療機関選びがリスク軽減につながります。安全に安心して無痛分娩をおこなうために、以下のポイントで医療機関を選びましょう。

  • 十分な無痛分娩の実績があるか
  • 麻酔科医は常駐しているか
  • 医療スタッフの数は十分か
  • 24時間365日対応しているか
  • 評判や口コミは良いか

無痛分娩の説明会を積極的におこなっているか、そのなかでリスクについて正しく説明しているかなども確認しておくのがおすすめです。

まとめ

無痛分娩は、陣痛による苦痛をやわらげ、快適なお産をサポートする有効な方法です。リスクとメリットを正しく理解し、信頼できる医療機関を選ぶことで、より安全で満足度の高いお産を実現できます。

無痛分娩を選択する場合には、実績や評判・口コミのほか、麻酔科医の常駐、医療スタッフ数、24時間365日体制などを確認し、安全性を重視して検討しましょう。

Topicsよく読まれる記事

Categoryカテゴリー

カテゴリー