Article胎児が養分をもらう仕組み|時期ごとの変化と食事上の注意点を解説
未分類 2024.12.08
妊娠とともに気になるのが、胎児が養分をもらう仕組みです。赤ちゃんがどのように養分をもらっているのか、元気に育ってもらうために食事で注意すべきことはあるのか、気になる妊婦さんもいるでしょう。
胎児の養分は、胎盤ができる前とできたあとで、もらい方が異なります。
この記事では、胎児が養分をもらう仕組みを時期ごとに解説します。妊娠中の食事で注意すべきポイントも紹介しますので、ぜひ今後の生活に役立ててください。
胎児が養分をもらう仕組み
胎児が養分をもらう仕組みは、妊娠の時期によって異なります。
妊娠中はおもに胎盤から養分をもらいますが、妊娠初期はまだ胎盤ができていません。そのため、胎児は卵黄嚢(らんおうのう)と呼ばれる部分から養分を得ています。
まずは、胎盤ができる前とできたあとに分けて、胎児が養分をもらう仕組みを解説します。
胎盤ができる前は卵黄嚢から
胎盤ができる前の胎児は、卵黄嚢(らんおうのう)と呼ばれる特殊なお弁当箱のようなものから養分を得ています。
卵黄嚢は、受精卵が胎児に育っていくときに分かれてできた部分です。胎盤ができるまでの間、胎児に養分を供給するほか、最初に赤血球がつくられる場所としても機能します。
卵黄嚢は5週前半ごろにエコーで白いリング状のものとして確認できますが、小さいために確認できないこともあります。
胎盤ができたあとは母体から
胎盤ができたあとは、胎児は胎盤からへその緒を通り、養分をもらいます。胎盤が完成する時期は、一般的に妊娠12週頃です。
ここでは、胎盤とへその緒、それぞれの役割を解説します。
胎盤の役割
胎盤のおもな役割は、以下のとおりです。
- 栄養の供給
- 老廃物の排出
- ホルモン分泌
胎盤は、胎児が養分をもらう仕組みで重要な存在です。胎盤内へ母体の血液が送られたあと、胎盤で血液中の酸素と栄養がフィルターを通り、赤ちゃんの血管(血液)の中に入ります。
胎盤は体に有害な物は通さないようになっていますが、ニコチンとアルコールは通ってしまいます。ニコチンは血管を収縮させ、胎児を酸素不足にさせたり、胎盤の機能を低下させたりする原因です。
一方、アルコールは胎児の低体重や奇形、脳障害を引き起こす恐れがあります。そのため、妊娠中にはたばこの受動喫煙やアルコール摂取なども避けなければなりません。
また、胎盤は妊娠を継続させるために重要な女性ホルモンを分泌する役割ももちます。赤ちゃんの成長にとっても、かけがえのない存在といえるでしょう。
へその緒の役割
へその緒は、胎児と母体をつなぐ重要な「命のパイプ」です。胎児にとっては、唯一の栄養補給路となります。
へその緒のおもな役割は、以下のとおりです。
- 栄養の輸送
- 老廃物の排出
- 免疫サポート
へその緒の中には、動脈2本と静脈1本、計3本の血管があります。静脈が母体から胎児に酸素や栄養、体内に侵入した病原体などの異物を排除するために作られる抗体を運び、動脈が胎児から母体へ二酸化炭素や老廃物を戻す仕組みになっています。
妊娠中の食事のとり方
妊娠中は塩分を控えながら、消化の良い、栄養バランスの取れた食事をとりましょう。食事のとり方のポイントを解説します。
栄養バランスのとれた食事をとる
妊娠中の食事は、母体と胎児の健康に影響しやすいため、栄養バランスを考えて摂取することが大切です。特定の食品に偏らないようにしながら、1日3食、規則正しくとるようにしましょう。
妊娠中の食事バランスについては、厚生労働省で「妊産婦のための食事バランスガイド」が出されています。推奨されるバランス内容は、以下のとおりです。
- 主食を中心にしっかりとエネルギーをとる
- 主菜は適量にとる
- 不足しがちなビタミン・ミネラルは副菜でたっぷりとる
- 牛乳や乳製品などを組み合わせてカルシウムも補う
ただし、つわりがつらいときには、口にできるものを、とれるタイミングで摂取してください。妊娠初期における胎児は、卵黄嚢(らんおうのう)から養分をもらっているため、栄養不足について過度な心配はいりません。
塩分を控えて薄味にする
妊娠中は薄味の食事を心がけることが大切です。塩分を過剰にとってしまうと、妊娠高血圧症候群につながる可能性があります。
推奨される1日の塩分摂取量は、6.5g未満です。梅干しやハム、ウインナーなど塩分が多い食品は控えるようにしましょう。
薄味を心がけるコツは、ダシを活用したり、香辛料や香味野菜で味にアクセントをつけたりすることです。味噌や醤油の使用量を減らし、塩分の少ない代替調味料を活用する方法もあります。
消化の良い食品をとる
妊娠中は胃腸の働きが弱まりやすいため、消化の良い食品を意識的に選ぶことが大切です。具体的には、以下のような食品がおすすめです。
栄養素 | 消化の良い食品例 |
炭水化物 | おかゆ、うどん、食パン、かぼちゃ、じゃがいも、バナナなど |
たんぱく質 | ささみや鶏肉(皮なし)、赤身肉など脂の少ないお肉、白身魚、卵、豆腐、納豆など |
ビタミン・ミネラル | 繊維の少ない野菜(ほうれん草、白菜、大根、キャベツ、人参など)、りんごなど |
これらの食品は、胎児へ栄養を供給できると同時に、母体の消化器官への負担を軽減できます。
母体や胎児のためにとってほしい5つの栄養素
妊娠中には母体や胎児のために、以下の栄養素をとるのがおすすめです。
- 葉酸
- ビタミンB6
- 鉄分
- カルシウム
- 亜鉛
なんのために摂取すべきかきちんと理解するために、それぞれの栄養素の特徴を把握しましょう。
1.葉酸
葉酸は、胎児の体をつくる細胞分裂や、脳の発育に必要な栄養素です。妊娠初期からの摂取で、脳・脊椎・脊髄に生じる先天異常の一種「神経管閉鎖障害」のリスクを下げる効果があるといわれています。
1日の推奨摂取量は、妊娠初期で240μg+葉酸の強化食品やサプリメント400μg、妊娠中期・後期で480μgです。食品では、以下のようなものに含まれています。
- ほうれん草
- モロヘイヤ
- ブロッコリー
- いちご
- レバーなど
サプリメントでの補給も効果的ですが、必ず医師や助産師に相談してから摂取しましょう。
2.ビタミンB6
ビタミンB6は、乳児期の脳の発達や胎児の免疫機能に関与しているほか、丈夫な胎盤を作るための栄養素です。また、母体にとってはつわりにも効果があるといわれています。
妊娠中の推奨摂取量は、1日あたり約1.3~1.4mgです。おもに、以下の食品に含まれています。
- レバー
- モロヘイヤ
- ブロッコリー
- バナナ
- アボカドなど
葉酸と同じ食品も多くあるため、積極的にとるとよいでしょう。
3.鉄分
鉄分は、酸素を運ぶために不可欠なヘモグロビンを作るための栄養素です。
妊娠中は胎児への栄養供給と母体の血液量増加にともない、通常より多くの鉄分が必要となります。不足してしまうと、胎児の発育不良や母体の貧血につながる可能性があります。
1日の推奨摂取量は、妊娠初期で9.0mg、妊娠中期以降で16.0mgです。鉄分が豊富なおすすめの食品は、以下のとおりです。
- レバー
- しじみ
- 小松菜
- ほうれん草
- 水菜など
鉄分は、ビタミンCを多く含んだ食品と一緒にとると、吸収しやすくなります。たとえば、野菜・果物・いも類などです。
4.カルシウム
カルシウムは、赤ちゃんの骨や歯の形成に欠かせない重要な栄養素です。妊娠中は、非妊娠時と同じ1日あたり約650mgのカルシウム摂取が推奨されています。
不足しがちな栄養素であるため、積極的にとるようにしましょう。カルシウムが多く含まれる食品は、以下のとおりです。
- 牛乳
- ヨーグルト
- ししゃも
- 木綿豆腐
- 切り干し大根など
不足すると、赤ちゃんの成長に影響するだけでなく、母体の歯や骨にもリスクが生じます。さまざまな食品から幅広く摂取することが大切です。
5.亜鉛
亜鉛は胎児の成長に欠かせない重要なミネラルです。特に、細胞の分裂や成長に大きな役割を果たします。
1日の推奨摂取量は11mgで、以下の食品に多く含まれています。
- 牡蠣
- 鶏肉
- カニ
- ナッツ
- 卵
妊娠中は胎児の成長・発達のために、亜鉛の摂取も心がけましょう。
まとめ
胎児が養分をもらう仕組みは、胎盤ができる前とできたあとで異なります。胎盤ができる前は卵黄嚢(らんおうのう)と呼ばれる特殊なお弁当箱のようなものから養分をもらい、胎盤ができると胎盤とへその緒を通して母体からもらいます。
妊娠中は胎児の健やかな成長のために、食事にも気をつけたほうがよいでしょう。栄養バランスを考え、塩分を控えながら消化の良い食品をとるのがおすすめです。
また、葉酸やビタミンB6、鉄分、カルシウム、亜鉛などの栄養素をとることも心がける必要があります。母体のためにも、胎児のためにも、食事面に気を付けながらお過ごしください。