Article無痛分娩での痛みはどれくらい?誤解や費用、医療機関の選び方も解説
未分類 2024.11.21
陣痛は、妊婦さんにとって大きな不安要素です。近年では、無痛分娩を選択肢とするケースも増加していますが「本当に痛みが軽減されるのか」「初産婦でも可能なのか」といった疑問を抱く妊婦さんも少なくありません。
この記事では、無痛分娩がもたらす鎮痛効果の目安や痛みを感じる場合の原因、誤解されがちな内容について解説します。費用目安や、後悔しないための医療機関選びのポイントも紹介するので、前向きな出産準備に向けて役立ててください。
無痛分娩による痛みへの効果
自然分娩の場合、お産が進むにつれて、痛みも増していきます。出産における痛みは、陣痛の強さやその人の感覚によっても大きく異なりますが、無痛分娩を選択すると、この痛みを3分の1程度に軽減することが可能です。
まずは、自然分娩で生じる痛みの目安や、無痛分娩の種類と効果の違いを解説していきます。
自然分娩で生じる痛みの目安
自然分娩では、陣痛をそのまま感じながら出産に臨みます。個人差もありますが、痛みはおへその下から腰全体にかけて強く感じやすく、不規則で弱い状態から徐々に規則正しく強くなっていくでしょう。
痛みのある間は「腰が砕けそう」と表現する産婦さんもいます。
無痛分娩の種類と効果の違い
無痛分娩は、麻酔を使用して分娩時の痛みをやわらげる方法です。おもに、以下3つの方法があります。
種類 | 特徴 |
硬膜外麻酔 | 背中からカテーテルを挿入し、硬膜外腔に麻酔薬を持続的に投与する方法。 陣痛の痛みをやわらげながら、意識のある状態で出産に臨める。 |
脊髄くも膜下麻酔 | 硬膜外麻酔と同じ針穴から出る専用の針を通じて、脊髄くも膜下腔に麻酔薬を投与する方法。 硬膜外麻酔より麻酔効果が早い。 |
静脈麻酔 | 点滴での麻酔方法。 硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔が難しいと判断された場合におこなうが、この中で効果はもっとも弱い。 |
一般的なのは硬膜外麻酔であり、お産の痛みを3分の1程度に軽減することが可能です。
お産の進行が早い状況など、早急に麻酔の効果が必要な場合には、硬膜外麻酔に加えて脊髄くも膜下麻酔を併用します。静脈麻酔は、硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔による無痛分娩が難しいと判断されたときに使用されますが、効果はこの中でもっとも弱いでしょう。
無痛分娩で痛みを感じる原因
無痛分娩は、出産にともなう痛みをやわらげる効果が期待できますが、完全に痛みをなくせるわけではありません。出産時の状況や個人の体質によって、痛みを感じる場合もあります。
無痛分娩で痛みを感じる場合の原因を解説します。
背中へのカテーテル挿入に違和感がある
硬膜外麻酔は、背中からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入するため、その前に針を刺します。刺すときには局所麻酔をおこないますが、針を進める段階で押されるような違和感を生じることもあるでしょう。
途中で電気の走るような痛みを感じた場合は、管が脊髄近くの神経に触れているため、すぐに医師へ伝えてください。場合によっては管の位置を調整しますが、一般的にはこの感覚は一時的であり、特別な処置を必要とせず改善します。
麻酔の効果が間に合っていない
無痛分娩で使用される麻酔の効果が現れるまでの時間は、約10〜30分です。以下のような状況の場合、麻酔の効果が間に合わない可能性があります。
- お産の進行が予想以上に早い
- 麻酔薬の吸収や効果への個人差
- 麻酔医の到着が遅れた
特に、経産婦さんは、分娩の進行が速く、麻酔のタイミングが間に合わないことがあります。
また、夜間や休日、ほかの人とのお産が重なった場合などは、麻酔医の到着に時間がかかることもあるでしょう。これから麻酔の準備をする場合には、麻酔薬の投与から効果が現れるまでの時間に加え、約30分~1時間かかります。
無痛分娩を希望する際は、医療機関と綿密に連携し、人によっては早めに来院するなどの対応も必要です。
個人ごとに痛みの感じ方が異なる
無痛分娩は痛みを3分の1程度にできるとされる出産方法ですが、痛みの感じ方には個人差があります。同じ刺激を受けても「痛い」と感じる人もいれば「少し感じる程度」と表現する人もいるでしょう。
さらに、不安な気持ちが痛みの感じ方に影響する可能性もあります。たとえば、未知の経験から痛みに対する不安も大きい初産婦さんや、前回の出産が壮絶な痛みだった経産婦さんは、少しの痛みでも敏感に感じてしまうかもしれません。
一方で、前回の出産がスムーズだった経産婦さんは、落ち着いてお産に向き合いやすくなります。
無痛分娩に関する2つの誤解
無痛分娩は「初産婦ではできない」「リスクが高い」などと誤解されることがあります。2つの誤解について解説するので、正しい知識をもったうえで、満足いくお産に向けて出産方法を選択しましょう。
1.無痛分娩は初産婦さんにはできない?
初産婦さんでも、医療機関の条件を満たしていれば無痛分娩は可能です。初産婦さんが無痛分娩を選択すると、以下のメリットがあるでしょう。
- お産にかかる身体的な負担を軽減できる
- 未経験で抱く痛みへの不安を軽減できる
- 初めての出産体験が満足したものへとつながりやすくなる
医療機関によっては「陣痛の経過が予測しにくく、計画出産が難しい」などの理由で、初産婦さんの無痛分娩を受け付けていないところもあります。そのため、無痛分娩を希望する初産婦さんは、事前に医療機関に相談し、方針や条件などについて確認が必要です。
2.無痛分娩はリスクが高い?
無痛分娩は赤ちゃんへの影響はあまりないとされており、さらに妊産婦死亡率についても明らかな相関はないといわれています。ただし、麻酔の使用で赤ちゃんが産まれるまでの時間は長くなりやすく、吸引・鉗子などの器械や陣痛促進剤を使う頻度が高くなるといった傾向があります。
また、麻酔が効いている間には、以下のような副作用も起こりうるでしょう。
- 足の感覚が鈍くなる、足の力が入りにくくなる
- 尿が出しづらくなる
- 血圧が下がる
- 体温が上がる
- かゆみを生じる
これらは、多くが麻酔の効果が切れるとともに消失していきます。
無痛分娩中は、お産終了までは同じベッドの上で過ごして転倒を予防し、尿の管を入れて管理します。医師や助産師が安全なお産のために全身管理をおこなっているため、不安な点があればすぐに相談するとよいでしょう。
無痛分娩の費用目安
病院の規模や種類、地域によっても異なりますが、無痛分娩の費用相場は、通常の分娩費用に約15万~20万円を加えた金額になります。厚生労働省の「出産費用の見える化等について」によると、2022年度における全施設の出産費用の平均は、48.2万円です。
無痛分娩は、これに約15万~20万円が上乗せされるため、単純計算で約63万~68万円です。
ただし、健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産したときには、出産育児一時金が支給されます。出産育児一時金は2023年4月より最高50万円に引き上げられており、退院前の精算時にはこれが引かれた金額を支払うことになるでしょう。
無痛分娩で後悔しないための医療機関選びのポイント
無痛分娩で後悔しないためには、安心して出産を任せられるよう、以下の視点で医療機関を選ぶのがおすすめです。
- 麻酔科の専門医が無痛分娩を管理している
- 24時間365日無痛分娩に対応できる
- 計画無痛・自然無痛どちらにも対応できる
高度な専門知識と経験をもつ麻酔科専門医が無痛管理をおこなうと、母体と胎児の安全性を最大限に確保でき、緊急時にも迅速な対応が可能です。きめ細やかな麻酔管理により、痛みの軽減と分娩の進行のバランスを適切に保ちやすくなります。
24時間365日無痛分娩に対応できる医療機関は、想定外の陣痛でもすぐに準備体制に入れるようになっています。医療スタッフの体制も万全であり、安全・快適に出産したい妊婦さんにとって、安心の選択肢です。
また、計画無痛と自然無痛の両方に対応できる医療機関を選ぶと、自分の状況や希望に応じて柔軟に対応してもらえます。
まとめ
無痛分娩は、出産時の痛みを3分の1程度に軽減できる方法です。痛みの程度には個人差があり、麻酔の効き方や分娩の進行速度によっても感じ方が変わります。
無痛分娩を選択する際は、麻酔の種類と特徴を把握しておくと、心の準備をしやすくなります。また、医療機関選びのポイントを押さえ、安心して出産に臨める場所を見つけておくことが大切です。
不安なことがあれば医師や助産師に相談し、満足のいくお産に向けて準備していきましょう。