Article31週での出産|赤ちゃんの状態や生存率、後遺症は残るのか解説
未分類 2024.12.08
「妊娠31週で出産になる可能性がある」と医師から言われてしまうと、妊婦さんは「この先どうなるのか」「赤ちゃんは元気に生まれるのか」と、不安な気持ちを抱えるでしょう。妊娠31週での出産は、正期産より早く生まれてしまうものの、適切な医療サポートで赤ちゃんの健やかな成長を支えることが可能です。
この記事では、妊娠31週で出産するとはどういうことなのか、赤ちゃんの成長状況や生存率、後遺症も含めて解説します。不安を少しでも軽減できるよう、正しい知識を得るための参考にしてください。
妊娠31週での出産とは
妊娠31週での出産は、「早産」に該当します。早産とは、妊娠22〜36週の間に破水や子宮収縮が起こり、赤ちゃんが生まれてしまう状況です。
似た言葉に「切迫早産」がありますが、こちらは安静や投薬で症状が落ち着き、その後も妊娠継続が可能な状態を指します。なお、早産が起こる確率は、妊娠女性の約5%です。
まずは、妊娠31週で出産になる場合の原因やなりやすい人の傾向、在胎31週における胎児の成長状況を解説します。
早産の原因
早産は、以下の因子が複雑に絡み合って発生すると考えられています。
- 子宮局所への感染
- 子宮への機械的な刺激
- 子宮の異常(奇形や筋腫など)
- 全身的な母体合併症など
この中でもっとも多いとされるのは、子宮局所での感染刺激による子宮収縮です。たとえば、子宮の出口に細菌が感染する「子宮頚管炎(しきゅうけいかんえん)」や、赤ちゃんを包む膜の周囲へ炎症がおよぶ「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」などがあげられます。
早産になりやすい人の傾向
早産になりやすい人の傾向としては、以下があげられます。
- 高齢出産、または未成年の出産である
- 前回の出産から半年以内に妊娠している
- 早産経験がある
- 子宮頸管が短い
- 子宮頸部円錐切除術を受けたことがある
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)
- 細菌性腟症(腟内感染の一つ)を起こしている
正常妊娠であっても、双子や三つ子などの場合には、子宮がキャパオーバーとなり早産につながる可能性があります。また、喫煙や重労働なども母体に負担がかかりやすく、早産になりやすいとされています。
在胎31週における胎児の成長状況
妊娠31週は、妊娠8カ月の終わり頃に該当します。この時期における胎児の成長の目安は、以下のとおりです。
- 身長40cm
- 体重1,600g
- 骨格がほぼ完成する
- 筋肉や聴覚が発達する
- 神経の働きが活発になる
妊娠31週はさまざまな機能が発達してきていますが、まだ自力で安定した呼吸をするのは難しい段階です。
通常、呼吸は肺の中にある肺胞でおこなわれ、この肺胞を膨らませておくためには「サーファクタント」と呼ばれる物質が重要です。胎児は妊娠24週目頃からサーファクタントを生産していますが、十分な量が分泌されるのは妊娠34~36週目頃になります。
妊娠31週で出産した場合の生存率
赤ちゃんの生存率は在胎週数が長いほど高くなり、在胎31週では97.5%となっています。
在胎週数 | 生存率 |
22~23週 | 66.1% |
24~25週 | 86.5% |
26~27週 | 94.0% |
28~29週 | 96.7% |
30~31週 | 97.5% |
ただし、在胎31週で生まれた場合には、赤ちゃんはまだ自力で呼吸するのが難しい可能性が高く、一時的に呼吸器が必要になることがあります。出産後にはNICU(新生児集中治療室)でのケアが必要になりますが、適切な医療サポートにより、赤ちゃんの健やかな成長を支えることが可能です。
妊娠31週で出産した場合に赤ちゃんに起こりうる後遺症
妊娠31週で出産した場合、赤ちゃんは未熟性から、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。ここでは、早産児で起こりうる代表的な後遺症について解説します。
呼吸窮迫症候群
呼吸窮迫症候群(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん)は、肺の中にある肺胞を膨らませるために必要なサーファクタントが十分でないことで発症する呼吸器症状です。在胎34週未満の早産児に発症しやすいとされており、以下のような症状がみられます。
- 呼吸が速くなる
- 息を吸うときに肋骨の間がへこむ
- 息を吐くときにうめき声がでる
このような症状がみられた場合、軽症では経鼻的持続陽圧療法(NCPAP)や経鼻高流量酸素療法(HFNC)と呼ばれる、鼻に呼吸器を装着する治療を行います。中等症以上の場合には気管挿管して人工呼吸で管理したり、人工肺サーファクタントを肺胞に投与したりします。
生後数日たつ頃にはサーファクタントを赤ちゃん自身で作れるようになり、十分量になると改善して呼吸器が不要となるでしょう。
慢性肺疾患
慢性肺疾患は未熟な肺が、酸素投与や人工呼吸、感染などで傷ついてしまった状態です。ダメージが大きい場合には、長期的に酸素投与や人工呼吸が必要となったり、ステロイド治療が必要となったりする可能性があります。
未熟児無呼吸発作
未熟児無呼吸発作(みじゅくじむこきゅうほっさ)は、呼吸中枢の未熟さ・気道のやわらかさ・呼吸をおこなう筋力の弱さから、時々呼吸を休んでしまう状態です。呼吸が20秒以上止まることもあり、心拍数が遅くなったり、皮膚の色が悪くなったりします。
軽症では体を揺らす、足の裏を刺激するなどで呼吸が再開しますが、頻発する場合には経鼻的持続陽圧療法(N-CPAP)や経鼻高流量酸素療法(HFNC)など、鼻から呼吸器を装着して補助したり、呼吸中枢を刺激するカフェインなどの薬剤を投与したりします。週数が経過すると、改善していくでしょう。
脳出血
早産で生まれた赤ちゃんは脳血管が未熟であり、血液の流れる量の変化が強いと破綻しやすく、脳出血になることがあります。特に、生まれてから最初の3日間は注意が必要であり、医療スタッフは十分な観察をおこないます。
後遺症が心配なケースは、脳実質へ出血した場合や、水頭症(すいとうしょう:出血で脳室に髄液が過剰にたまって脳実質を圧迫している状態)をきたした場合です。水頭症が進む場合は、髄液を逃がす通路を入れる手術が必要になるケースもあるでしょう。
未熟児網膜症
未熟児網膜症(みじゅくじもうまくしょう)は、目の中にある未熟な網膜血管が順調に伸びず、異常な血管が増えてくる状態です。進行してしまうと網膜剥離を起こし、重篤な視力障害や失明にいたる可能性があります。
おこなえる治療は、レーザー治療や目の中への抗血管増殖因子の注射です。ひどい場合には、硝子体(しょうしたい)手術と呼ばれる、目の中にある硝子体と呼ばれる組織を取り除く手術をおこないます。
未熟児動脈管開存症
未熟児動脈管開存症(みじゅくじどうみゃくかんかいぞんしょう)は、胎児の頃に開いていた心臓の穴が誕生後に閉じない状態です。
胎児は母体から酸素をもらえるため、心臓から肺に血液を流す必要がなく、大動脈と肺動脈の間にある動脈管というバイパスの血管を通って体に血液を流しています。生まれたあとは自分で呼吸することで動脈管は不要となり、通常は自然に閉じていきます。
早産児は閉じるのに時間がかかり、肺と心臓に負担がかかるため、必要に応じて治療が必要です。治療を要する場合にはインドメタシンやイブプロフェンという薬剤を使用しますが、何度やっても効果がない場合には手術適用になります。
壊死性腸炎
壊死性腸炎(えしせいちょうえん)は、腸の組織が未熟なことで、血流不足や感染などで傷ついて壊死してしまう状態です。以下のような症状がみられます。
- 便に血が混じる
- 腸液を吐く
- おなかが膨れる
- ぐったりする
腸内細菌が損傷を受けた腸壁から血管内に入ると、感染症を引き起こします。
治療としては、腸を休ませて点滴から栄養補給をしつつ、細菌感染には抗生剤を使用します。損傷が進行した場合には、手術が必要です。
なお、壊死性腸炎は、ミルクより母乳のほうが起こりにくいといわれています。
早産児は未熟性からさまざまな疾患を引き起こす可能性がありますが、NICU(新生児集中治療室)での高度な治療やケアによって、健やかに成長している赤ちゃんも多くいます。早期発見・早期治療により、後遺症のリスクを最小限に抑えることが可能です。
妊娠31週で出産にならないために注意できること
早産にならないためにもっとも重要なのは、妊婦健診をしっかり受けることです。医師から安静などの指示があった場合には、必ず守るようにしましょう。
また、長時間立ちっぱなしだったり、重いものを持ったりなど、体に負担のかかるような動作は避けなければなりません。たばこも早産につながる可能性があるため、家族が吸っている場合にも注意することが大切です。
まとめ
妊娠31週での出産は早産となり、赤ちゃんはNICU(新生児集中治療室)で医療サポートを受ける可能性が高くなります。生存率は97.5%と高く、適切な医療サポートにより後遺症なく過ごしているお子さんも多くいます。
とはいえ、在胎週数が長いほど、赤ちゃんの成熟度も上がります。早産になる可能性のある妊婦さんは、医師の指示を守りながら無理のない生活を送るよう心がけましょう。